第18回フェアトレードタウン国際会議@エジンバラ 報告会
2025年10月2日(木)、日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)は「第18回フェアトレードタウン国際会議(Fair Trade Towns International Conference)」およびフランス視察のオンライン報告会を開催しました。
本報告会では、世界のフェアトレードタウンやフェアトレード大学の最新動向、各国の取り組み、そしてフランスにおける法制度やローカル・フェアトレードの実践について、現地での気づきや考察を交えながら参加者の皆さまと共有しました。
第18回フェアトレードタウン国際会議
2024年8月29日から31日までの3日間、スコットランドの首都エジンバラにて「第18回フェアトレードタウン国際会議」が開催されました。今年のテーマは「Your Town, Our World(あなたの街が私たちの世界)」。フェアトレード生産者や活動家、政府関係者、企業、教育機関など、世界30カ国以上から約300名が参加し、地域と世界をつなぐフェアトレードの新しい物語(New Narrative)を描く議論が行われました。日本からは日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)より、内山代表理事、高津副代表理事、原監事が参加しました。
会場となったエジンバラ市庁舎では、スコットランド議会の大臣をはじめ多くの関係者が登壇し、「フェアトレードは製品を売るための仕組みではなく、人と人、都市と世界をつなぐ架け橋である」と語りました。この言葉は会議全体を象徴するメッセージとなり、参加者たちはそれぞれの地域での経験を共有しながら、フェアトレードの新しい可能性を探りました。会場では立場や国境を超えた対話が自然に生まれ、フェアトレードタウンを次の時代へどう発展させていくかをめぐって活発な議論が交わされました。
会議では、フェアトレードの今後を考えるうえで三つの方向性が共有されました。第一に、フェアトレードはもはや「やさしい買い物」ではなく、社会課題を解決するためのプラットフォームであるということ。第二に、若者が運動の中心となり、SNSなどを通じて自らの言葉で発信していくことの重要性。そして第三に、政治や制度と連携し、行政や教育現場を通じて社会に根づかせていくことの必要性です。フェアトレードを社会の周縁的な活動にとどめず、「当たり前の選択肢」として制度化することの重要性が改めて確認されました。
「Your Town, Our World」というテーマには、地域の小さな取り組みが世界的な変化の力になるというメッセージが込められています。世界各地の参加者がそれぞれの経験を持ち寄り、フェアトレードタウンが持続可能な世界的連帯の象徴であることを改めて確認する機会となりました。フェアトレードは経済活動を超え、社会全体を変える運動へと進化しているという実感に満ちた会議でした。
フランス視察
エジンバラでの会議終了後、日本代表団はフランス・パリを訪問し、フェアトレード推進団体「コマース・エキタブル・フランス」と老舗フェアトレード団体「アルチアン・デュ・モンド」を訪れました。前者は日本のFTFJにあたる認証・推進団体であり、後者は生産者支援と流通を担う全国ネットワークとして知られています。
特に印象的だったのは、フランスではフェアトレードが「倫理的な選択肢」から「社会制度の一部」へと進化しているという点でした。2021年に施行された「気候レジリエンス法(Loi Climat et Résilience)」により、行政機関が調達する物品のうち50%を持続可能な商品、うち10%をフェアトレード品にすることが義務付けられています。この法制度により、フランスのフェアトレード市場は前年比25%増という成長を遂げ、政策が市場を確実に後押ししていることが紹介されました。
フランスでは早くからフェアトレードが法律上で定義され、2005年以降、段階的に制度化されてきました。2014年の「社会的・連帯経済法」では、公共調達や教育などの政策分野にフェアトレードが明確に位置づけられています。こうした仕組みにより、フェアトレードが市民社会の価値観として根づき、国の制度の一部として定着していることが感じられました。
さらに、現在のフランスでは「ローカル・フェアトレード」という考え方も広がっています。国内の小規模生産者や地域経済を支える取引も同じ枠組みで認証の対象とされ、「アンフェアをフェアにする」という理念をもとに、国内外を問わず公正な取引を推進する制度が整えられています。複数の認証制度が共存し、WFTOやFairtrade Internationalのラベルに加えて、国内独自のエシカル認証や生産者主導の仕組みなど、さまざまな形のフェアトレードを包括的に支える体制も整っています。
現地では、フェアトレードを単なる取引ではなく「社会的正義(グローバル・ジャスティス)」を実現するための運動として捉える考え方が広く共有されていました。フェアトレードは途上国支援にとどまらず、あらゆる不公正をなくす社会運動であるという認識が広がっており、まさに新しいフェアトレードの時代を感じさせる視察となりました。
このフランスでの調査を通じて、日本においても「南北」や「倫理的消費」といった枠を超え、地域経済や環境政策と連動したフェアトレードのあり方を模索していく必要性が見えてきました。行政、企業、市民がそれぞれの立場で「アンフェアをフェアに変える」行動をどう支えていくのか。フランスの制度と現場から、そのヒントを多く得ることができました。
今後もFTFJは、国内外のネットワークと連携しながら、日本におけるフェアトレードの普及と発展に努めてまいります。
